特定技能2号とは?受入れ企業が知っておくべき在留資格変更のポイント
「特定技能」制度は、日本の深刻な人手不足に対応するための新たな在留資格として2019年に創設されました。2025年6月現在、16の産業分野で外国人材の受入れが可能とされています。
※関連情報:特定技能とは?
特定技能制度の運用が進む中、特定技能1号の次のステップとなる『特定技能2号』への注目が集まっています。
特定技能2号は「熟練した技能を持つ外国人が日本で長期的に就労し、生活基盤を築けるように」と設計された、特定技能1号が次に目指す在留資格です。特定技能1号の人材をすでに受け入れている企業の皆様にとって、特定技能2号へのステップアップは、特定技能人材の長期の定着に向けた重要な課題となります。
この記事では、特定技能2号の概要、申請要件、取得の流れ、注意点、そして実務対応の内容について詳しく解説します。
特定技能2号とは?
制度の背景と目的
特定技能2号は「熟練した技能を有し、さらに現場では指導や管理等の業務にも対応できる外国人材」を対象とした在留資格で、特定技能1号が次に目指すことになる在留資格になります。この制度は、特定技能1号の外国人が一定期間就労した後も、継続的に活躍することを目的として創設されました。
日本国内での人材確保が特に困難な分野では、一定のスキルを持つ外国人材の定着が企業様の持続的成長に不可欠とされています。今後、長期的に人材を確保していく手段として、特定技能2号は、大変重要な在留資格であるといえます。
特定技能1号との違い
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
在留期間 | 通算5年まで | 更新制限なし |
家族の帯同 | 不可 | 可(配偶者・子) |
永住権取得 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
支援計画 | 必要 | 不要 |
技能水準 | 基礎レベル | 熟練レベル |
日本語要件 | 分野により異なる | 実質的に中級レベル必要 |
特定技能2号の対象分野
2025年6月現在、以下の11分野で、特定技能1号から特定技能2号への移行が可能となっています。
- ・建設
- ・造船・舶用工業
- ・農業
- ・漁業
- ・飲食料品製造業
- ・外食業
- ・自動車整備
- ・航空
- ・宿泊
- ・ビルクリーニング
- ・工業製品製造業
※介護分野について 介護分野は特定技能2号ではなく、別の在留資格「介護」への移行が用意されています。
今後も対象分野の追加が検討されているため、最新情報のご確認をお願いします。
特定技能2号の取得要件
特定技能2号には一定の実務経験や高い日本語能力が求められるため、在留資格取得への道のりは決して平坦とはいえません。そのため、企業様と特定技能1号本人が一緒になって、目標に向けて計画的に取り組んでいくことが大切です。
在留資格を取得するためにどんな条件を満たす必要があるのか、具体的に見ていきましょう。
(1)技能水準の証明
各分野ごとに定められた特定技能2号評価試験または技能検定1級等の国家資格に合格する必要があります。
- 試験の特徴:
- ・試験は基本的に日本語で行われる
- ・分野によってはルビなしの漢字表記もあり
- ・マネジメント能力や現場管理に関する問題が出題される場合もある
対象者が日本語や試験内容に不安がある場合、事前の日本語教育や模擬試験の受験等の、事前サポートが重要です。
(2)実務経験
分野によって求められる経験年数や内容は異なりますが、多くの分野で以下の項目が求められます。
- ・2~3年以上の実務経験
- ・管理・指導的立場での経験
- ・実務経験証明書の提出が必須
例: 農業分野では、管理職でなくても3年以上の実務経験があれば受験可能ですが、外食業や建設などの分野では、一定の管理的な職務経験が求められます。
(3)日本語能力
特定技能2号は、1号のように明確な日本語試験の合格要件は設定されていませんが、試験が日本語のみで実施されるため、実質的にJLPT N3からN2程度の日本語力が必要とされています。
また外食業や漁業などの一部分野では、JLPT N3以上の合格が要件と明示されているため、事前の確認が重要です。
企業様が行うべき準備と対応
特定技能2号への移行をスムーズに進めるためには、企業様のサポートが必須です。企業様で行うべき準備と対応について見てみましょう。
実務経験証明書の発行
証明書には、以下の情報を正確に記載する必要があります。
- ・勤務期間(年月日)
- ・業務内容(なるべく詳細に)
- ・担当ポジション(指導的立場であったかどうか)
- ・発行責任者の署名・捺印
前職の証明書が必要になる場合もあり、本人が円滑に取得できるよう、企業様としても協力体制を整えましょう。
試験の申し込み支援
- ・ID取得、会員登録などの事前準備
- ・試験日程や試験会場の情報提供
- ・試験料の支援(企業様判断)
分野によっては、企業様の申し込みが必要なケースもあります。企業担当者が責任を持って手続きを進められるよう体制を構築しておきましょう。
特定技能1号の実務経験とキャリアサポート
特定技能2号への移行には、実務経験と、分野によっては管理・指導業務が必要とされます。受け入れている特定技能1号が特定技能2号への移行を目指す場合、5年間のうちにいかに実務経験をつみ、管理業務をおこなうか、企業担当者は計画的にキャリア形成をサポートする必要があります。
特定技能2号取得のメリット
特定技能2号への移行は、企業様と外国人双方にとって大きなメリットがあります。企業様にとっては「育てた人材が長く働いてくれる安心感」につながり、働く外国人にとっては「日本での将来設計が描ける安心感」という大きな意味があります。
企業様側のメリット
- ・長期雇用が可能となり人材が定着する
- ・現場リーダーとしての活躍が期待できる
- ・人材育成投資の回収可能性が高まる
- ・2号への移行支援をアピールすることで人材採用で優位に立てる
外国人本人にとってのメリット
- ・在留期間の制限なし
- ・家族を呼び寄せられる
- ・永住権取得の道が開かれる
- ・キャリアアップが図れる
このように、特定技能2号は、企業様と外国人の双方にとってプラスになる制度といえます。人手不足がますます深刻になる中で、こうした「お互いにメリットがある仕組み」を活用することは、安定した経営や、多様な価値観を受け入れる職場づくりにつながっていくことでしょう。
実際のステップとスケジュール感
以下は一般的な特定技能1号から2号へのステップです。
- 1.対象者の実務経験・職務内容の確認
- 2.企業様による実務経験証明書の作成・発行
- 3.試験情報の入手、準備支援(必要に応じて研修)
- 4.評価試験の受験・合格
- 5.出入国在留管理庁へ在留資格変更許可申請
- 6.申請後、通常1~3か月で結果通知
スケジュール目安: 審査にはある程度の時間がかかるため、準備から申請まで3~6か月程度を見込んでおくことをおすすめします。
注意点
特定技能2号への移行にあたり、改めて注意点を確認しておきましょう。
主な注意点
- ・「試験合格=自動的に2号に移行」というわけではありません。 実務経験が要件に達していない場合は申請できません。
- ・退職済み企業様への実務証明依頼には時間がかかることもあります。 早めの確認が必要です。
- ・分野によっては、まだ2号の試験が実施されていないことがあります。 公式情報をこまめにチェックしましょう。
- ・転職を繰り返すと、実務経験が分散して要件を満たせないリスクがあります。 できるだけ計画的に配置することが重要です。
登録支援機関としてできること
わたしたち登録支援機関は、企業様と外国人の皆さんの間に立ち、制度理解と取得支援の橋渡しを行う役割を担っています。
- 具体的な支援内容:
- ・実務経験証明の作成支援
- ・試験対策や情報提供
- ・書類作成や申請手続きの補助
- ・外国人へのキャリア相談
「特定技能1号で働いている人材が2号を取得して定着する」ことは、企業様にとっては貴重な戦力の長期確保、外国人本人にとっては安定したキャリア形成という、双方にとって重要な転換点です。登録支援機関を上手に活用し、制度の正しい理解と段階的な準備を進めていきましょう。
まとめ
特定技能2号の在留資格取得までは、決して簡単な道のりではありません。しかし、その分メリットも非常に大きく、即戦力として活躍する外国人材の長期定着に向けた有効な選択肢となります。
企業の皆様には、ぜひ制度の最新情報を正しく把握し、対象者が特定技能2号を目指すための環境づくりとサポート体制の構築をお願いします。
わたしたちは登録支援機関として、企業様と外国人の両者に寄り添った支援を行っておりますので、ご相談があればいつでもお気軽にご連絡ください。